接合工法の種類

接合工法 – 摩擦攪拌接合 –

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摩擦攪拌接合

[定義]

摩擦撹拌接合とは、先端にピン状の構造を有した円筒形のツールを回転させながら、被接合材に挿入し、その際に発生する摩擦熱を利用して接合する方法です。本接合方法では、材料を溶融させず、被接合材に塑性流動を生じさせ固相の状態で接合します。挿入時の抵抗低減、および材料の攪拌促進のため、ピンにはネジが切られています。線接合はFSW(Friction Stir Welding)点接合はFSSW(Friction Stir Spot Welding)と呼ばれています。FSWは突合せ溶接、重ね溶接、FSSWは重ね溶接に用いられます。

摩擦攪拌接合は被接合材を溶融させずに、軟化した状態で塑性流動を利用して接合を行う固相接合であるため、溶融溶接のような「溶接金属」、「熱影響部」といった構造とは異なる、特徴的な接合部を形成します。

接合部は、主に以下三つの領域を形成します。接合部中央の撹拌領域である「撹拌部(SZ)」(Stir Zone)、その外側に塑性変形と熱の影響を受けた「熱加工影響部(TMAZ)」(Thermo Mechanically Affected Zone)、さらにその外側の塑性変形の影響は受けず、熱的な影響を受けた「熱影響部(HAZ)」(Heat Affected Zone)です。

摩擦攪拌接合 断面図

摩擦攪拌接合の断面図

 

FSW(突合せ溶接)の接合プロセスは以下のとおりです。

  1. 先端にピンを有するツールを回転させながら、被接合材に挿入します。
  2. ピンと被接合材の間に摩擦熱が生じます。
  3. 摩擦熱により、ピン近傍の被接合材が軟化します。
  4. ピンにネジが切られているため、軟化した材料が攪拌されます。
  5. 被接合材表面の酸化皮膜は機械的に破壊、除去されます。
  6. 被接合間で相互に塑性流動が生じます。回転により、被接合材をもう一方の被接合材に押し付けるような形で圧接されるような形で接合がなされます。
摩擦攪拌接合_接合プロセス図_FSSW

FSSW(Friction Stir Spot Welding)の接合プロセス図

 

ツールは材料の流動、および移動の際の抵抗を考慮して、その移動方向に対して後方に傾けることが多いです。

また、鋼とアルミ合金など融点差がある場合は、アルミ合金のみ塑性流動させ、その軟化したアルミ合金を鋼板側に押し付けるような形で接合がなされます。

そのため、鋼側の酸化皮膜を破壊、除去するため、ピン先端を鋼表面を少し削り取るような位置に設置して接合するような場合もあります。

FSSWの場合も、回転するピンと被接合材の摩擦熱を利用して、材料を軟化、塑性流動により接合する点は変わりません。FSSWは、重ね溶接のため被接合材の上下方向に材料が流動して接合がなされます。

摩擦攪拌接合 FSW

FSW(Friction Stir Welding)の接合プロセス図

[特徴]

摩擦攪拌接合の特徴は以下のとおりです。

  1. アルミ合金の接合に用いる場合、熱影響による材質劣化が少ないため、良好な接合継手を得ることができる。場合によっては、金属組織が微細化するため、継手強度を母材強度以上に向上させる場合もあります。
  2. ピンによる被接合材の攪拌により、被接合材表面の酸化皮膜を機械的に破壊、除去できるため、フラックスなど酸化皮膜を除去する処理が不要です。また、真空雰囲気、シールドガス雰囲気といった、雰囲気制御が不要で、大気雰囲気での接合が可能です。
  3. 溶融溶接に比べて、低温での接合が可能であるため、異種材料間での接合が可能です。

[適用範囲、注意点]

摩擦攪拌接合の注意点は以下のとおりです。

  1. 3D構造含め、複雑な形状の接合の場合、ツールの位置制御の関係で適用が難しい場合があります。
  2. 被接合材の攪拌状態は材料の融点に影響を受け、攪拌領域はピンの長さに依存するため、適用可能な材質や板厚に制限があります。
  3. ピン挿入時、線接合時の移動の際、被接合材には大きな荷重が発生するため、十分に拘束できる固定治具が必要となります。
  4. FSWの場合、接合部終端でピンを抜く際、穴が残ります。FSSWの場合もピンを抜いた後、穴が残ります。

[事例]

自動車用途ではリアドア、サスペンションアームなどの接合に適用されています。航空機用途では、ターボファンエンジン、ロケット推進剤タンクの製造、鉄道車両用途では新幹線を始めとする鉄道車両の接合に適用されています。

(図   適用事例の部品図)

[トレンド]

適用範囲拡大のために、3D構造含め、複雑な形状を接合できるような装置が開発されています。FSSWのピンを抜いた後の穴を埋めるためにピン周囲の部分が稼動するツールも開発されています。これまで、アルミ合金の接合に広く用いられてきましたが、鋼、チタンといった材料への接合にも適用され、その範囲を拡大しています。

[今後]

摩擦攪拌接合は、先端にピン状の構造を有した円筒形のツールを回転させながら、被接合材に挿入し、ピンと被接合材間で発生する摩擦熱を利用して接合する方法です。固相での接合のため、溶融溶接に比べて、熱影響に材質劣化が少ないため、良好な接合継手を得ることができます。

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