接合工法の種類

接合工法 – 電子ビーム溶接 –

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電子ビーム溶接

[定義]

電子ビーム溶接とは、陰極をフィラメントで加熱することにより熱電子を放出させ、電圧の付与により加速、運動エネルギーを増大させ、磁場の付与により収束させることでエネルギー密度を集中させた状態で被接合材に衝突させ、その際に生じる熱を利用して接合する方法です。

エネルギー密度を集中させた状態の電子の運動エネルギーを利用するため、溶接幅が細い、溶け込み深さが深い接合部が得られるのが特徴です。

また、熱影響部も小さく、熱によるひずみも抑えることができます。熱電子加速の際、空気中の気体分子による減速を防ぐため、真空中での接合が必要となります。そのため高コストなため、付加価値が高い寸法精度が要求される部品の接合に向いています。

装置は電子銃、収束レンズ、偏向レンズ、溶接室で構成されます。陰極と陽極が電子の加速、集束レンズと偏向コイルが電子の向きを揃える役割を担います。

溶接プロセスは概ね下記の流れで進行します。

  1. 電極フィラメントを加熱することにより、熱電子を放出させます。
  2. 陰極と陽極間に高電圧を付与することで電子が加速します。加速した熱電子流を集束レンズ、電磁コイルで集束させ、被接合材に衝突させます。
  3. ビーム照射点において被接合材の被接合材が溶融します。
  4. 電子ビームを移動することで順次、接合部が形成されます。熱源のエネルギー密度が高いため、幅の狭い、深い溶け込みの接合部が得られます。
電子ビーム溶接

電子ビーム溶接の接合プロセス図

[特徴]

電子ビーム溶接の特徴は以下のとおりです。

  1. 溶接ビードの幅が狭く、深い溶け込みの溶接が可能です。
  2. 影響部の領域は小さく、溶接変形を抑えることができます。
  3. 熱伝導率の高い被接合材(銅、アルミなど)の接合も可能です。
  4. 真空での接合であるため、活性金属(チタン、ニオブなど)の接合が可能です。
  5. 高融点の被接合材(モリブデン、ジルコニウム、タンタルなど)の接合も可能です。
  6. 薄板から厚い板まで、接合可能な板厚の範囲が広いです。
電子ビーム溶接

電子ビーム溶接の接合部の状態 「せまい溶接幅、深い溶け込み」が得られる。

[適用範囲、注意点]

電子ビーム溶接の注意点は以下のとおりです。

  1. 装置が精密、かつ複雑であり、真空雰囲気での接合となるため、設備投資コスト、生産コストが高いです。
  2. 真空中のプロセスのため、部品取り付け、雰囲気制御、接合、部品取外しいうように工順が多岐にわたるため、大量生産には向きません。
  3. 真空状態に管理したチャンバ内での接合になるので、チャンバに入らない部品の接合には適用できません。

[事例]

自動車用途では、クラッチ部品トランスミッションギアブレーキハンドル、航空機用途では、ジェットエンジン燃料制御、船舶用ではクランクシャフトといった部品の接合に適用されています。

[まとめ]

電子ビーム溶接とは、陰極から放出される熱電子を電圧の付与によって加速、磁場の付与により収束させた電子ビームのエネルギーを熱源として利用する接合方法です。

溶接ビードの幅が細く、溶け込みが深い接合部が得られます。

熱源のエネルギー密度が高いため、熱影響部が小さく、溶接ひずみを抑えることができます。

高熱伝導、高活性、および高融点といった、様々な被接合の接合に適用することが可能です。

その一方、装置が、精密かつ複雑であり、真空雰囲気での接合となるため、設備投資コスト、生産コストが高く、大量生産には不向きです。

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